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3.11から15年…木造住宅の「耐震」はどう変わったのか?

カテゴリー:コラム 耐震

明日、3月11日で東日本大震災から15年を数えます。

震災で犠牲になられた方々に改めて深く哀悼の意を表するとともに
今もなお復興の歩みを続ける皆様に心よりお見舞い申し上げます。

津波を含む自然災害の恐ろしさを痛感し、埼玉県内でも液状化した住宅地を目の当たりにする等
立地や地盤に起因する被害も多く見られました。1995年の阪神淡路大震災を契機に建築を志し、
今も建築を生業とする私には「地震に強い家とは何か」を問い続けてきた歳月でもありました。

(2024年11月、福島の被災地の様子… 過去ブログ

本コラムでは木造住宅の耐震性がどのように変わり、これからどう向き合うべきか、
簡易的な説明となりますが、お伝えできればと思います。

1. 「倒れない性能」から、「住み続けられる性能」へ

現行の耐震基準(2000年基準)は「震度6〜7の地震で倒壊せず、命を守ること」を目標
としています。(倒壊せず=全壊や半壊は想定される…という解釈になります)

しかし、2016年の熊本地震で震度7クラスの揺れが連続して発生する現象が起こり、
「大地震の後も住み続けられる性能」が必要である…という考え方が生まれてきました。
記憶に新しい2024年の能登半島地震でも、その必要性は改めてクローズアップされました。

◆ 熊本地震での建物被害調査より

被害調査結果も踏まえ、新築での性能指標となるのが「耐震等級3(最高等級)」です。
その中でも、部材一つひとつに加わる力を緻密に解析する「許容応力度計算」に基づいた
精度の高い検証が木造住宅にも望ましいのですが、昨年時点ではまだ少数派…の状況です。
【耐震性能】ページ … タルシルは「許容応力度計算」による耐震等級3がルール

また、建物を固めて耐える「耐震」に、揺れを吸収して逃がす「制震(せいしん)」技術を
プラスする手法も出現しました。制震ダンパーなどで地震エネルギーを吸収することで、
建物のダメージを最小限に抑え、構造の「粘り」を維持する合わせ技です。
 *先ず「耐震」性を十分に高めること、その次に検討するのが「制震」…の順番です。

2. 「今ある住まい」を、あきらめない … 進化する耐震改修

新築の性能が上がる一方、私が同じく大切にしているのが既存住宅を守る「耐震改修」です。
「家が古いから地震には勝てない…」とあきらめず、「倒壊リスクを少しでも下げるための
耐震補強」を前向きに検討することは、ご家族の命や財産を守るために大切なことです。

①補強の「見える化」
かつては職人の経験に頼っていた補強工事も、現在は高度なシミュレーションソフトの活用
により、建物のどこに負荷が掛かり、どこを補強すべきかを数値で示せるようになりました。
タルシルでは3Dソフトを使用して、補強前と補強後の状況をビジュアルで説明しています。

◆ 左:耐震診断時(評点0.38) → 右:解体後の再調査による最終補強案(評点1.11まで向上)

→根拠のない補強計画は、かえって耐震性のバランスを崩す可能性もあります。
 耐震補強=耐震診断と補強計画(計算書)による検討は必須…と覚えてください。

②「今の暮らし」を止めない補強方法
部分的な解体のみで耐震補強できる、生活への負担を最小限に抑えた施工方法も有ります。

居ながら耐震補強工事では評点1.0という一定の安全基準まで到達しない場合も多くなりますが
具体的には耐震診断評点0.2前後の古い建物を、(費用負担を抑えつつ)評点0.7~0.8程度まで
引き上げることは十分に可能で、タルシルではそのような工事の実績も複数あります。

なお、むやみに強い壁を作って補強すると、特に無筋基礎の場合は基礎の破壊リスクがあり、
注意が必要です。(調査すると、特に1981年以前の建物は無筋の基礎が多く見受けられます)

◆ 収納内の壁を、床を解体せずに補強した例

→理想の補強(評点1.0以上)に到達できなくても、可能な限り積極的に耐震補強をすることは
 「命を守る確率を上げる」ことにつながります。「諦めるのではなく、できる限り補強する」

③「重さ」をコントロールする
建物を強くするだけでなく、瓦葺きなどの重い屋根を軽い素材に葺き替えることで
地震時の揺れを根本から小さくする「減震」のアプローチも、非常に効果的です。


→瓦屋根を否定する意図は、全くありません。タルシルでは瓦屋根を残しつつ、
 その他の部分の耐震補強で評点1.0をクリアしたリノベーション事例もあります。

「住まいの健康診断」
特に、耐震の基準が大きく変わった2000年の「以前に建てられた住まい」は総じて
現在の知見で
見直すと(耐震診断すると)、補強が必要なケースがほとんどです。

「住まいの健康診断(耐震診断)」を受けると、お住まいの耐震性や傷み具合が分かります。
→先ずは非破壊による調査で、国の定めたルールに則った診断方法となります

身体の診察と同様、「どこを直すべきか」が分かり、大切な命と住まいを守るための処方箋
となります。専門性が高く経験値が必要な業務ですが、タルシルが得意とする仕事の1つです。

工務店さんからのご依頼で、【診断→補強計画の提案→解体後に現地再確認→補強の再提案】
といった流れで、耐震補強工事のサポートを行うことも増えてきました。
→研修を受けて診断資格は持っていても、実務として診断できる建築士は少ない状況です

結びに…
家は「家族の命を守るシェルター」であると同時に、「日々の安らぎを育む場所」と思います。
これからも建築士事務所として、確かな根拠に基づく「強さ」と、暮らしの「心地よさ」を
両立させた住まいづくりを続けてまいります。

大切な住まいについて不安なこと、気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

taruShiru株式会社 一級建築士事務所

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